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Creation

【SCP風】サンプルシナリオ

『基本情報』

 怪異名称:【吸って、吸って、吐いて】

 汚染度:B

 調査者コード:401

 出没区域:■■■県□□□市 

 怪異説明:

・この怪異は現在進行で直接的な被害を進ませるものではなく、長期的に人間を苦しませる怪異です。【吸って、吸って、吐いて】は影響を与えた人間たちに二度の呼吸をさせた後、一度吐かせるだけの怪異です。ただし一度の呼吸で摂取する酸素の量が減少し、窒素の量が増加します。影響を受けた人間は以降、これを繰り返し続けます。又、一度体内へ侵入を許してしまうと、窒素が循環する限り、体内で生き続けます。

 

・【吸って、吸って、吐いて】は物質的な身体は持たず、大気中の窒素分子に混ざり合っていることが確認されています。対象を捕獲、又は処分をするためには、大気中の窒素を消滅させる必要があります。それを実行するのは不可能に近く、【吸って、吸って、吐いて】を完全に消滅させることは出来ません。


・ただし体内に潜む【吸って、吸って、吐いて】は酸素室への入室により、窒素の減少で消滅させることが可能です。【吸って、吸って、吐いて】に干渉した□□□はただちに酸素室への入室許可を申請してください。


・【吸って、吸って、吐いて】は僅かながら知能があり、医療関係者の体内へ侵入しようと試みる傾向があります。又、医療関係者の体内へ侵入した後、診察に訪れる人間たちへ「吸って、吸って、吐いて」と口走るようになります。二度吸わせることで、感染範囲を広げようと試みています。


・【吸って、吸って、吐いて】の影響による犠牲者は◆◆◆人となります。感染は未だ防げず、感染率は人口の三十パーセントを占めました。早急に【吸って、吸って、吐いて】への対処が必要です。



『観察記録』

 感染0日目:

 被験者□□□を隔離部屋へ移動させ、一ヶ月ほど感染経過を観察することにしました。


 感染一日目:

 被験者□□□に異常は見られず、朝昼夜と食事を摂り、静かに眠りにつきました。


 感染一週間目:

 やや息苦しそうに一日を過ごしました。又、三食摂っていた食事が朝と夜の二食のみに変わりました。


 感染二週間目:

 息苦しさが目立つようになりました。喉を掻きむしり、何度も咳き込み、苦しみから逃げられぬ一日を終えました。食事に対してはまるで無関心の様子です。


 感染三週間目:

 今までの息苦しさが無かったかのように、非常に陽気な立ち振る舞いへと変化しました。

 「俺を被験者として選んだのは、何か理由があるんだろ?」

 「こんなに幸せなことがあるか」

 「吸って、吸って、吐いて」

 以上の被験者の言動から、感染前よりも『楽観的』『自意識過剰』な面が垣間見えるようになりました。


 感染一ヶ月目:

 被験者□□□は窒素中毒により死亡しました。隔離部屋の窒素濃度が九十五パーセントなのに対し、被験者□□□の体内に摂取された窒素量も九十五パーセントを超えているようでした。隔離部屋は速やかに酸素濃度を九十パーセント以上に保ち、【吸って、吸って、吐いて】を消滅させました。



『コード401の調査記録』

 コード401:

 出没区域の■■■県□□□市までやってきた。送られてきた座標通りの場所ならば、ここはドが付くほどの田舎だ。コンビニ一つすらありゃしない。あるのはジジババが育てた野菜を売り出しているマーケットぐらいだ。おまけに水道も通っていない。この時代に井戸の水で水分を補給しているのか?


 ■■■■:

 コード401へ。不要な情報は必要ありません。速やかにK442の根源を突き止めてください。


 コード401:

 分かってるって…。

 あー、何か神社みたいなのがあるな。鳥居の色は白色で…境内はまっったく掃除されてねぇ。枯れ葉やら動物のクソやらで塗れてらぁ。神聖な場所とは思えねぇなこりゃあ。


 ■■■■:

 コード401へ。それ以外に何か変わった箇所はありますか?


 コード401:

 境内歩き回ったが、特に変わったところはねぇ。次は本殿の中を確認してみる。


 ■■■■:

 コード401へ。了解。


 コード401:

 お邪魔しますよーっと…。

 あー、暗くて周りがよく見えないな。ライトで少し照らしてみるか…。


 コード401:

 ――なんだよこりゃあ。


 ■■■■:

 コード401へ。何か見つけましたか?


 コード401:

 何かどころじゃねぇ…!! 

 なんだよこれ?! こんなの、こんなの聞いてねぇぞ!!


 ■■■■:

 コード401へ。落ち着いてください。現状報告をお願いします。


 コード401

 人間の死体だよ…!

 本殿の内部はそこらかしこに死体が転がってんだ! 壁にも、天井にも、俺の足元にも、全部死体が転がって――

  

 ■■■■:

 コード401へ。通信状況が悪化しています。


 コード401:

 ※$%#$&#&


 ■■■■:

 コード401へ。通信状況の悪化により、内容を聞き取れませんでした。もう一度お願いします。


 コード401: 

 ――て――て


 ■■■■:

 コード401へ。繰り返します。通信状況の悪化により、内容を聞き取れ――


 コード401:

 吸って、吸って、吸って、吸って、吸って、吸って、吸って、吸って、摺って、擦って、擦って、擦って、擦って――


 ■■■■:

 コード401へ。携帯の酸素スプレーの使用を許可します。直ちに使用してください。


 コード401:

 すッ――ぇ――す――ッ――ぁッ――


 ここでコード401との通信が途絶えました。

 後に数人の調査者を送り込みましたが、コード401の行方はおろか、記録に残っていた神社の姿すら見当たりませんでした。コード401の死因は最後の記録から窒息死として扱われます。


 又、最期の記録を音声解析したところ何かを"擦ったような音"が含まれていることが分かりました。未だ、その音による発生源は解析できていません。


 以上がK442【吸って、吸って、吐いて】の記録となります。

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